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呪いのジャスコと私の正直者フレンド

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ジャスコ⇒イオンに変わりつつあるころ、

私の地区は出遅れて、まだ赤と緑のJロゴのままだった。

 

 

幼馴染・S子の家は厳しかった。

「絶対に嘘をついてはいけない」

と育てられた彼女は、真正の正直者だった。

 

中一の春、2人それぞれ500円玉を持って、

ジャスコに友達の誕生日プレゼントを買いに来ていたら、

 

「ちょっとごめん」

 

と肩を叩かれた。

振り返ると、ナメ猫みたいな5人組(女)が立っていた。

 

「こんな漫画みたいなヤンキー、実在するんだ・・・!」

 

というオドロキ&恐怖で凍っていた私、

隣でキョトンとしている幼馴染・S子

 

くっちゃくっちゃガムを噛んでる人、

短ランで腹見せしてる人、

ロンスカを引きずってる人、

チェーンをポケットでチャリチャリいわせてる人。

みんな眉ナシだった。

 

 

S子「はい、なんですか?」

ヤンキー(以下ヤ)「あのさあ、ちょっと顔貸して?」

S子「はぁ、いいですよ」

私「・・・!」

 

 

S子は5人にさらりとくっついていったので、

私も後を追うしかなかった。

S子は陸上部で俊足なのに、

逃げるというチョイスは頭にないらしい(※S子は超秀才です)。

 

当時のジャスコはまだ防犯が整っておらず、

奥まった暗いトイレに連れ込まれた私たちに

警備員という味方はない。

 

 

私は逃げたかった。

隙を突いて逃げたいけど、S子がトイレの奥にいるので

(もうダメだ、捕まった)と絶望して歩いてたら

「とっとと歩けよアホ!」と肩を突き飛ばされた。

私はつんのめった。

 

S子「だいじょうぶ~?」

私「いや・・・うん」←大丈夫じゃない

 

私たちは壁を背にして立たされた。

 

一番後ろに立っていた女が、どこからか木刀みたいなのを

チラつかせた。流血を覚悟した。

 

 

ヤ「あのさ、すっごいゴメンなんやけどさ、

あたしら、ちょっとお金が足りへんねん」

S子「はい」

ヤ「でさ、いくら持ってる?財布に」

S子「それぞれ500円ずつです」

ヤ「マジ?ごめんな、ほんまにごめんやけど、

貸してくれへんかな?絶対に返すから!」

 

 

私は早く500円を差し出して、その場を去りたい一心だった。

ところが正直なS子は、トンデモ行動に出た。

 

ヤ「お金は絶対に返したいからさぁ、

自分ら、ドコ中?名前教えてかー」

 

(うわ・・・これがヤンキー抗争???)

 

私の地域には、4つの中学校が密集していて、

一部ヤンキーがタイマン(死語)を張ったり

縄張り争いしたりしている、と聞いていた。

でも私たちには、そんなの無縁だった。この時までは。

 

私たちの中学はマンモス校で目を付けられていた。

だから、ここで中学名は出してはいけないのだ。

 

 

S子のほうを見ると、何食わぬ顔をしている。

私は俯いているのに、S子は強いな・・・。

 

 

尊敬のまなざしで友をチラ見していたら、

S子はなんと、

 

「〇〇中学校1年△組、陸上部の×井S子です」

 

と答えたのだ。

 

(自己紹介・・・!)

 

組と部活、そしてフルネームまで丁寧に教えている。

私は、木刀の女よりも、

隣の幼馴染のほうにドキドキした。

 

ヤ「へえ・・×井S子ね。覚えとくわ。で、隣は?」

私「・・・〇田です・・・」

 

私は明らかに小さくなってたので(チキン)、

それ以上尋問はなかった。

 

 

500円ずつナメ猫に渡すと、

「ありがと~、〇〇中学の×井さんたち。

ウチラはK中の3年。ツテ使って、

お金必ず返すわ」

と言われ、私たちは解放された。

 

私「S子、あの角曲がったらダッシュしよ!」

S子「ええ?なんで?」

私「追っかけられたら困るから!」

 

角を曲がってダッシュしたら、

S子はめちゃくちゃ足が速くて、私は「ちょ・・・待って!」

必死で追いかけた。

 

 

 

呪いのジャスコから遠く離れて、

S子が「ああ、疲れた~」と呑気なので

「S子!なんでフルネーム教えたん!?」

と詰め寄ったら、

「え?だって訊かれたから」と言った。

 

 

私「いや、だって今の、カツアゲやし!」

S子「え、そうなん?でもあの人ら、お金なくて困ってたし」

私「・・・!」

 

なんということでしょう。

 

この素直さは彼女の魅力・・・しかしこの場合は?

 

 

S子「だって、お金返してくれるときに、

名前と部活が分かったほうが、間違いがなくない?」

私「お金、返ってくると思ってる?」

S子「うん、だって絶対返すってゆうてたしさ」

 

 

このとき思った。

<人は、他人が自分と同じ思考回路をしていると思うものなんだ>

と。

そして、S子の素直さが心配になった。

 

 

S子は東大に行った。

スポーツ面も凄い。美人で目立つ存在だった。

今でもエリートコース一直線でバリキャリ&子供の母親だ。

自慢の幼馴染。

 

 

でも、このときの記憶は鮮烈で、

S子に「あのカツアゲ、覚えてる?」ときいたら

「え?なにそれ?」と言われた。

 

これが大物か・・・!

 

と自分との差を見たのでした。

 

 

頭が良すぎると、どこか性格的に抜けるのかもしれないな。