漫画みたいな会話を繰り広げたバイク屋さんと私

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ペーパードライバーの私は、

理由あって、車でなくスクーターを買うことにした。

 

数カ月前、スクーターを買うお店を決めるべく

ネットを漁ってたら、「イケメン店員が丁寧に応対します」という

触れ込みのお店を見つけた。

 

早速イケメンに電話をかけたら、

店長さんらしき人の応対が事実丁寧で温かかったので、

そのお店で買うことにした。

 

店頭にあるレトロ計器のスクーターにヒトメボレ即決。

私の雀の涙のようなお小遣いは露と消えた。

 

 

お店にはハーレーやらカワサキバイクやら、

排気量のすごいバイクが所狭しと並んでいて、

私の選んだスクーターはまるで三輪車だった。

 

 

私は、店長のおじさんが以前は車派だったのが、

いまや大型二輪のツーリストとなった経緯を聞いた。

 

私「車と二輪、どちらがお好きですか」

店長さん「今は二輪。もうね、断然二輪」

私「何が違うんですか」

店長さん「風に、なるんですよ」

 

風に、なる—。

 

ひとしきり、おじさん含めその場の人は爆笑したが、

ふっとおじさんは遠い目になって、

照れるでもなくオフザケでもなく、

 

「いや、本当にね、風になれますよ。

じかに風を浴びるのがこんなに気持ちいいのか、とね。

車じゃあ、あれは味わえませんから」

 

と語った。

 

目の前のおじさんが、仲間の人と

たんぼの稲穂を揺らしながら、

風のように走り抜けていく様を想像した私は、

「私も風になれるでしょうか」

と咄嗟に言ってしまった。

 

人生でこんな漫画めいたセリフを口にするのは

おそらく最初で最後でしょう。

 

 

すると、店長さんは微笑みながら

「もちろん!なれますよ、風に」

と言った。

「大型じゃなく、スクーターでも風になれるでしょうか(笑)」

とたずねると、

「ま、スクーターは手慣らしでね。

いずれは250ccとかにしていって、

本気の風になっていけばいいと思いますよ(笑)」

と言った。

 

帰り際、店長さんは

「いい風になってください!」と手を振ってくれた。

 

”風”というワードを、

これほど会話に登場させたことはない。

 

 

私はこの時の刷り込みで、

<スクーターに乗る=風になる>

という図式が出来上がってしまい、

スクーターに乗る前はいつも、

「ちょっと風になってくる」

という挨拶になった。

 

今、ようやく少し風になれるようになってきたところだ。

 

でも初めて大通りに出るときは、

「ちょっと星になってくるわ」

と言って出掛けた。

 

今のところ、私は星にならずに済んでいる。